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- 2026.03.02コラム
【2026年版】社会保険料率の変更点まとめ|東京都・埼玉県版の実務ガイド
2026年度(令和8年度)の社会保険料率改定が近づいています。給与計算の実務において、保険料率の変更は手取り額や法定福利費に直結する重要な関心事です。特に東京都や埼玉県といった事業所が集中するエリアでは、僅かな変動がコスト面に大きな影響を及ぼします。今年は通常の料率改定に加え、新設される「支援金制度」の徴収も始まるため、例年以上に緻密な実務対応が求められるでしょう。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の料率改定
健康保険料率および介護保険料率は、2026年3月分(4月納付分)から改定されます。全国平均の料率は引き下げられますが、自治体や年齢区分によって負担の増減が異なる点に注意が必要です。
東京都・埼玉県の健康保険料率(医療分)
協会けんぽの健康保険料率は、都道府県ごとの医療費水準を反映して設定されます。2026年度における、東京都と埼玉県の確定料率は以下の通りです。
| 都道府県 | 2025年度(現行) | 2026年度(改訂後) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 9.91% | 9.85% | ▲0.06% |
| 埼玉県 | 9.76% | 9.67% | ▲0.09% |
東京・埼玉の両支部ともに料率は微減となりました。標準報酬月額30万円の従業員であれば、労使合計で月額数百円程度の負担軽減が見込まれます。
介護保険料率の引き上げ
40歳以上64歳以下の従業員(介護保険第2号被保険者)が負担する介護保険料率は、全国一律で改定されます。こちらは健康保険料率とは対照的に、引き上げとなりました。
•2025年度:1.59%
•2026年度:1.62%
わずか0.03%の引き上げですが、昨今の物価高騰下では現場の負担感も無視できません。システム設定時には、健康保険料の「下げ」と介護保険料の「上げ」が混在するため、入力ミスへの警戒が必要です。
【2026年新設】子ども・子育て支援金制度
2026年度より本格導入される「子ども・子育て支援金制度」は、本年度の給与実務における最大の変更点。事業主が全額負担していた「拠出金」とは異なり、従業員と事業主の双方が負担する点に大きな特徴があります。
支援金率0.23%の適用
子ども・子育て支援金は、健康保険料に上乗せされる形で徴収されます。2026年度の支援金率は、全国一律で0.23%。健康保険料と同様、労使折半(各0.115%)で負担する仕組みです。
例えば東京都の従業員(介護保険対象外)の場合、実質的な保険料率は「健康保険料率9.85%+支援金率0.23%=10.08%」となります。健康保険単体では「引き下げ」ですが、支援金の合算によりトータルの負担額は前年度を上回る点に留意しましょう。
徴収開始時期の注意点
実務上で最も混乱が予想されるのが、徴収開始のタイミングです。通常の健康保険料率改定は「3月分」からですが、支援金制度は「4月分(5月納付分)」からの適用となります。
1.4月支給給与(3月分):改定後の健康・介護保険料率のみ適用
2.5月支給給与(4月分):改定後の健康・介護保険料率+支援金(0.23%)を適用
※翌月徴収の場合
このように、2か月連続で設定変更が必要になる可能性が高いため、給与ソフトのアップデート通知やマニュアルを事前に確認するのが賢明といえます。
雇用保険料率の引き下げ
雇用保険料率は年度単位で改定が行われます。2026年4月からは、失業等給付の財政状況を背景に、料率が引き下げられる見込み。従業員の手取り額にもプラスの影響を与える変更内容を整理します。
労働者負担分・事業主負担分の内訳
「一般の事業」における2026年度の雇用保険料率は、全体で1.35%に設定される予定です。従業員の給与から控除する「労働者負担率」も引き下げとなります。
| 区分 | 2025年度 | 2026年度(案) | 変更内容 |
|---|---|---|---|
| 全体料率 | 1.45% | 1.35% | ▲0.1% |
| 労働者負担 | 0.55% | 0.50% | ▲0.05% |
| 事業者負担 | 0.90% | 0.85% | ▲0.05% |
実務担当者は、2026年4月1日以降に適用される「最初の締日」を確認しなければなりません。4月に入ってから支払う給与であっても、内容が3月分の労働対価であれば旧料率を用いる場合があるため、自社の運用ルール(締日・支払日)の再確認が不可欠です。
実務上の留意点とシステム更新
料率の変更が相次ぐ中、給与計算システムの設定変更や従業員への周知は遅延なく行うべき事項。特に「いつの給与から変更するか」の判断は、各社の締日・支払日に依存するため慎重な判断が求められます。
徴収時期の誤認防止
社会保険料(健康・厚生年金・介護)は、原則として「翌月徴収」ですが、自社が「当月徴収」を採用している場合は注意が必要です。
•翌月徴収:3月分の保険料(新料率)を4月支払の給与から控除
•当月徴収:3月分の保険料(新料率)を3月支払の給与から控除
対して雇用保険料は「給与を支払う都度」の計算。4月中に支払う給与(4月1日以降に締め切る給与)から新料率を適用するのが一般的です。項目によって改定タイミングが異なるため、チェックリストを作成して対応するのが効率的でしょう。
従業員への説明と周知方法
手取り額の変化に敏感な従業員は多いため、事前の周知は欠かせません。今回の改定では「健康保険は下がったが、支援金の導入と介護保険の引き上げにより、手取りが微減した」というパターンが起こり得ます。社内掲示板やチャットツールを活用し、「制度改定による変更」であることを明確に伝えておくと、不要な問い合わせや不信感を防ぐことができます。
まとめ
社会保険制度の変遷は、企業経営と従業員の生活に深く関わるものです。2026年度は、健康保険料率の引き下げ、介護保険料率の引き上げ、そして「子ども・子育て支援金」の新設と、複数の要素が複雑に絡み合う年。担当者は正確な情報に基づき、着実に実務を進める姿勢が求められます。地道な作業の積み重ねこそが、従業員との信頼関係を築く強固な礎となるでしょう。
